寒い時期に決まって訪れる、体の不調や意欲の低下。その症状、もしかしたら“冬季うつ病”かもしれません。冬季うつ病は、日照不足などの影響によって体内のホルモンバランスが崩れ、心身にさまざまな不調をきたします。冬季うつ病の特徴やセルフケアの方法について理解を深め、冬を健やかに過ごしましょう!
“冬季うつ病”って何?
気分の落ち込みや意欲の低下、不眠などを引き起こすうつ病。そのうち、秋から冬にかけて症状があらわれ、春に軽快するサイクルをくり返すものを“冬季うつ病”といいます。季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder;SAD)とも呼ばれ、春や梅雨など冬以外の季節でも起こる場合があります。冬季うつ病自体は医学的な用語ではありませんが、冬の日照時間が少ない地域では、この時期にうつ症状を感じる人が多いといわれています。
冬になるとうつになりやすくなるのは、日照時間が原因といわれています。日照時間の減少によって、セロトニンなどの心の安定に欠かせないホルモンが減少し、以下のホルモンバランスが崩れやすくなります。
心の安定ホルモン セロトニン
ドーパミン、ノルアドレナリンをコントロールし、精神を安定させる
不足すると…
・イライラ、気分が落ち込む
・セロトニンを材料にするメラトニンが不足し、睡眠の質が低下する

やる気ホルモン ドーパミン
喜びや楽しさ、心地よさを生み出し、ワーキングメモリ※にも関与する
※一時的に情報を保存しながら、処理する能力
不足すると……
・感動・喜びなどの感情が希薄になる
・記憶力、作業効率が低下する

集中力ホルモン ノルアドレナリン
交感神経の活動を高め、集中力や積極性を生み出す
不足すると……
・気力や意欲が低下する
・仕事や遊びに対する持続性や関心が低下する

冬は、なにかとストレスも多い季節。この時期に決まって症状があらわれる場合でも、繁忙期やストレスなど季節以外の原因があるものは、冬季うつ病には該当しません。原因によって経過や対策も異なりますので、症状の原因をふり返ることも大切です。
冬季うつ病のおもな症状
気分の落ち込みや疲労感、イライラなど、冬季うつ病の症状は、一般的なうつ病と共通しているものが大半です。しかし、ホルモンバランスが崩れることで、食欲の増加や過眠傾向など、冬季うつ病特有の症状があらわれます。
つらい症状が続き、日常生活に支障をきたす状態が続くときは、無理は禁物です。精神科・心療内科などの医療機関を受診、またはかかりつけ医に相談しましょう。
●うつ病と冬季うつ病の違い
| 共通点 | 異なる点 | |
|---|---|---|
| うつ病 | ・気分が落ち込む ・気力がなくなる ・イライラする ・疲れやすい など | ・食欲が低下する ・不眠 ・体重減少 |
| 冬季うつ病 | ・食欲が増加する ・過眠(たくさん寝ても眠い) ・体重増加 |
冬季うつ病を防ぐ 4つの生活習慣
日照時間が減少することで起こる冬季うつ病は、誰もがなるおそれがあります。寒い季節こそひと手間かけて、心にやさしい生活習慣を身につけましょう!
1.積極的に日光を浴びる
日光はセロトニンの分泌を促します。体内時計をリセットするために、起床したらカーテンを開けて朝日を浴びましょう。外出したり、窓を開けたりして、なるべく午前中に日光を浴びることも効果的です。
2.規則正しい生活リズムで過ごす
生活リズムを整えるポイントは、“起床・睡眠・食事”です。休日はつい寝だめをしたくなりますが、なるべく同じ時間に起きて15~30分程度の昼寝で補うようにしましょう。また、食事の時間をそろえると、1日の過ごし方が自然と整えられます。
3.適度な運動を取り入れる
ウォーキングやジョギングなど一定のリズムで行う有酸素運動には、セロトニンの分泌を増やす効果があるといわれています。晴れた日は、日光浴もかねて散歩に出かけてみましょう。
4.栄養バランスを意識した食生活
セロトニンは、必須アミノ酸のひとつ“トリプトファン”からつくられます。冬季うつ病では、炭水化物や甘いものを好む傾向がありますが、トリプトファンが多く含まれるたんぱく質を意識して摂取することが大切です。トリプトファンの吸収を助けるビタミンB6とB12の摂取も心がけましょう。
| トリプトファンが豊富な食材 肉類、魚介類(ぶり、いわしなど)、豆腐、のり、バナナ、牛乳、チーズ など | |
| ビタミンB6が豊富な食材 まぐろ、にんにく、鮭、ごま、抹茶 など | ビタミンB12が豊富な食材 青魚、かつお節、いか、レバー など |
参考
・厚生労働省「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~(休養・こころの健康)」
・東京法規出版「まいにちメンタルヘルス」
次回のテーマは「健康のひと工夫で、生活習慣病を予防しよう!」を予定しています
生活習慣病は、自覚症状が少ないまま進行し、命にも関わる恐ろしい病気です。しかし、日々のちょっとしたつみ重ねから予防することができます。2月からはじまる「生活習慣病予防月間」にちなみ、今回は、忙しい毎日でも取り入れられる生活習慣病予防の“ひと工夫”をご紹介。今日から健康づくりをはじめて、未来の自分を守りましょう!